今回のブログでは、農地への無断侵入問題解決に向けて、その対策を少し視野を広げて整理してみたいと思います。

 「農業と観光業との折り合いなどの課題に向き合い、今日まで培ってきた写真文化を通じて、美しい景観を将来に引き継ぐため、美瑛ルールをSNS等を通じて世界に発信」(平成29年第4回定例会

 これは、前回前々回のブログでも触れた、一昨年の町議会による浜田町長の答弁であり、今まで行ってきた立入禁止の看板や観光アドバイザーによるパトロール等に加え、この課題に関する美瑛町の基本的な考え方と思われます。
※当時は美瑛ルール制定前であったため、正確には「美瑛ルールを」ではなくて「新たな美瑛独自のルールづくりについて」という答弁でした。

 実はこの内容、「美瑛の美しい農業景観を写真文化を通じて世界に発信する」という観光宣伝的要素も含まれているため、まわりくどい表現になっていますが、簡潔に表現すると「農地への無断侵入問題を解決するため、美瑛ルールを世界に発信する」ということになります。

 つまり、「美瑛ルールを世界に発信する」のはあくまでひとつの手段であって、目的は「農地への無断侵入問題を解決すること」ですよね。 

 しかし、「美瑛ルールを世界に発信する」ことで、この目的が達成できるのでしょうか?

 この点については、「NorthQuest びえい未来ネット」さんの (No.40) 風が吹けば桶屋が儲かる、美瑛~農業と観光の事例研究でも指摘されている点であり、全くその通りだと思います。

 すなわち、美瑛ルールをアジア圏30億人に対して無作為に発信するのではなく、「美瑛を訪れる人に美瑛ルールを発信する」ことができれば、発信する対象もかなり絞り込まれるとともに、行うべき対策を具体的に検討していけるのではないでしょうか?

 もし私がこの問題対策を担当する立場にいるとしたら、以下のように整理して考えようかと思っています。


【目標】
①美瑛を訪れる人に、美瑛ルールを知ってもらう
②美瑛を訪れる人に、美瑛ルールを守ってもらう

【評価指標】
①美瑛ルール認知度 ○○%以上
②農地への侵入件数 年間○○○件以下
※認知度とは美瑛ルールという名称を知っていることではなく、美瑛ルールの内容をある程度理解していること。

【政策】
①美瑛ルール認知度向上
(1)美瑛を訪れる可能性のある人に知ってもらうための政策
  ・美瑛ファン(美瑛町観光協会のフォロワーなど)への発信
  ・北海道ファンへの発信
  ・美瑛を主たるフィールドとして活動している写真家のフォロワーへの発信
  ・美瑛町の各施設のフォロワーへの発信
  ・風景写真愛好家への発信(美瑛は風景写真の聖地と言われている)
  ・統計的に美瑛に来る可能性が高い人たちへの発信(例:冬の韓国人)
  ・美瑛を舞台にしたドラマや映画に感銘を受けた人への発信(例:ラブレイン)
  ・Facebook広告でのターゲット絞込み(地域、年齢層、趣味、関心事、行動など)
  ・Instagram広告で特定ページにいいね!している人で絞込み
  ・Google広告を利用した美瑛ルール広告発信(美瑛観光を連想させるワードでの検索)
(2)美瑛に訪れたことのある人に知ってもらうための政策(リピーター対策)
  ・各宿泊施設の宿泊台帳に載っている人への発信
  ・その他、各施設が持っている顧客情報に載っている人への発信
  ・SNSで#bieiや#美瑛で発信している人への発信 など
(3)近く美瑛を訪れる予定の人に知ってもらうための政策
  ・美瑛町の宿泊施設に予約が入った人への発信
  ・旭川空港のレンタカー屋に予約が入った人への発信
  ・美瑛を経由地等とした観光ツアーに予約が入った人への発信 など
(4)美瑛を訪れている人に知ってもらうための政策(水際対策)
  ・空港のレンタカー屋での対応
  ・観光協会や道の駅などでの対応
  ・町のレンタサイクル屋での対応
  ・各種ツアーでの対応
  ・観光アドバイザーによる対応
  ・位置情報サービスにより美瑛町周辺に訪れた人(前回のブログを参照)
(5)ニュースとして広く発信するための政策
  ・罰則を伴う条例の制定による美瑛町の決意表明(次回のブログに掲載予定)
  ・「哲学の木」「インスタ映え」問題など

②美瑛ルール遵守
(1)取り締まり等による抑止力の強化
  ・立入禁止の看板設置
  ・観光アドバイザーの体制・質の強化
  ・罰則を伴う条例の制定(次回のブログに掲載予定)
  ・観光客のスマホを監視カメラ化する対策(前回のブログを参照)
(2)美瑛ルール違反がもたらす農業被害発生リスク啓蒙することによる抑止力の育成
(3)美瑛や農業に関心を持つことによる抑止力の育成
  ・美瑛ファンになってもらう
  ・農業に関心や理解をもってもらう
(4)いわゆるインスタ映え対策

③目標達成に向けて評価指標を定量的に設定するための政策
(1)美瑛ルール認知度アンケートの実施
(2)農地への侵入実態調査の実施(前回のブログを参照)


 まずは、①美瑛ルール認知度向上についてです。

 ①美瑛ルールを認知していない場合、②美瑛ルール遵守ができるかどうかは、その人のモラルや、その人の国や地域の文化的・社会的背景に依存すると思います。

 よって、農地への無断侵入が悪いこととの文化的・社会的背景がない国や地域から訪れた外国人たちには、まず何よりも美瑛ルールを認知してもらう必要があります。

 日本人でも都会に住む多くの人たちは、「牧草地は公園の芝生の延長みたいなもの」と考えている人は、残念ながら大勢いるようです。

 また、農村地域から来た人でも、米の生産地周辺から来た人は、畑作が害虫に弱いことを知らずに、自分の住んでいる近所の田んぼのあぜ道に入る感覚で、畑作農地に侵入してしまう人も大勢います。

 よって、日本人にももちろん美瑛ルールを認知してもらう必要があります。

 そのためには、以下のような「美瑛を訪れる人」、もしくはその可能性のある人たちに発信する方が、より効率・効果的ではないかと考えました。

(1)美瑛を訪れる可能性のある人に知ってもらうための政策
(2)美瑛に訪れたことのある人に知ってもらうための政策(リピーター対策)
(3)近く美瑛を訪れる予定の人に知ってもらうための政策
(4)美瑛を訪れている人に知ってもらうための政策(水際対策)
(5)ニュースとして広く発信するための政策(不特定多数)

 それぞれの発信対象者について、どのように美瑛ルールを発信していくかは、多くの町民の協力を得て検討していく必要があります。

 例えば、写真家のフォロワー/風景写真愛好家等への発信、インスタ映え問題対策などは、写真映像協会がリーダーシップをとって対策を検討したり、リピーター対策としての宿泊台帳に載っている人達への発信や宿泊予約が入った人達への発信は、各宿泊施設にお願いするのか、町が情報収集して発信するようにするのかなどを、商工会が各宿泊施設と協議するなどです。
 但し、宿泊情報を町に集めて発信する場合、改正個人情報保護法の問題がありますので、各施設のプライバシーポリシーの利用目的に「法令または行政当局の通達・指導などに基づく対応」のような文言を入れる必要があると思います。

 ※改正個人情報保護法で、改正前の個人情報が5,000人分以下の小規模取扱事業者は対象外という条件が撤廃されましたので、宿泊施設は全て改正個人情報保護法対象事業者となり、プライバシーポリシー(個人情報保護方針)を作成することが推奨されます。プライバシーポリシーを作成していないと、このような個人情報の公的な利用に際し、宿泊客ひとりひとりの承諾を得なければならないからです。

 その他、美瑛町が主体的に行うべきこととしては、ターゲティングしたSNS広告戦略が考えられます。

 例えば、北海道経済部観光局の訪日外国人宿泊客数によると、平成25年度以降、冬の外国人観光客として韓国人が圧倒的に多いことが分かります。

 私がここ数年、雪原の丘に醜い足跡を残している人たちを注意すると、韓国人がとても多いので、この統計は個人的な感覚とも一致します。

 恐らく、韓国ドラマ「ラブレイン」のダイヤモンドスノー(ダイヤモンドダストのこと)の影響ではないかと考えております。

 もし可能であれば、チャン・グンスクに富良野美瑛広域観光協会の観光大使になってもらい「私がラブレインで雪原の丘に入っているのは、地主に撮影許可を得ているから。ここは私有地である農地であり、雪の下には小麦がじっと春を待ち続けているので、道路から決して入り込まないで!」と発信してもらうことが最善策でしょう。

 しかし、そんなことは簡単にはできませんので、Facebook広告などで、国籍、趣味、関心事、年齢層、行動などを絞り込んでターゲティングして、冬に特化した美瑛観光や美瑛ルールの発信を行うことです。

 冬の韓国人以外にも、観光客統計などの情報より、様々なターゲティングが考えられると思います。

 「ターゲティングしてSNSで世界に発信」、これが美瑛ルールを効率的に広める1つの手法ではないかと考えられます。

 Instagram広告でも同様のターゲティングができるはずです。

 あとは、Google広告も候補として考えられます。
 
 「美瑛」「風景写真」「ダイヤモンドダスト」等のようなワードで検索するということは、美瑛に訪れる可能性がある人と考えられますので、美瑛への観光を想定されるようなワードで検索された場合、美瑛ルールに関する広告を出すというようなことも、検討すべきかと思います。

 もちろん、これら広告には広告宣伝料が必要となりますので、リーチ数の目標値を設定するなどで、必要となる金額を算出し、予算を確保していく必要があります。
 (恐らくリーチ数10万人で2万円程度でしょうか?)
 

 少し別の視点から「近く美瑛を訪れる予定の人」への発信を考えてみたいと思います。

 安部政権の成長戦略として、円安や観光立国ニッポン政策により、訪日外国人が急激に増えている日本。 

 2013年に訪日外国人1000万人突破がニュースになりましたが、昨年末に訪日外国人3000万人突破が日本政府観光局より発表されました。

 わずか5年で3倍です。

 訪日外国人増による経済効果は認めるものの、多くの観光地でオーバーツーリズム(以前は観光公害などとメディアが読んでいました)が発生しています。

 前回のブログで紹介した鳥取砂丘の落書き問題もそうですし、国内では、京都のあきまへんがその最たる例でしょう。

 その観光地固有の観光ルール/観光マナーについて、来ると分かった段階で的確にその観光客に伝えることができれば、地方自治体の負担はかなり軽減されるでしょう。

 私の考えとしては、政府の成長戦略の結果、発生してしまったオーバーツーリズムへの対策として、そのリカバリー戦略として、観光庁が中心となって以下のようなシステムを構築することです。

①観光客が旅行サイト等を通して予約を取得する
②確定した宿泊予約、レンタカー予約、バス予約については、全て観光庁のシステムに一度通知される。
③観光庁のシステムでは、予約先の地方自治体のシステムに観光マナー等が記載された文書を送信するように通知する。
④地方自治体のシステムでは、観光マナー等が記載されたPDFファイルを準備しておき、観光庁からの通知に応じて送信する(PDFファイルは勿論多言語対応で)。
⑤観光庁は、予約者のメールアドレスに、PDFファイルを送信する。

 ポイントは、地方自治体ではなく、観光庁という国土交通省が送信することで、観光マナーを守るための日本政府の国策であることを予約者に意識させることです。

 これにより、例えば美瑛町に宿泊予約が入ったら、美瑛町観光協会に通知が入り、予め用意した美瑛ルールのPDFファイルを観光庁のシステムに送信し、観光庁のシステムから自動送信メールで美瑛ルールを予約者に送信するというようなシステムできるのではないかと思います。

 本来であれば、東京オリンピック時のオーバーツーリズム対策として、その時までにこのようなシステムが構築できればと考えておりますのが、安倍政権はどのような対策で東京オリンピックに臨むのでしょうか?


 水際対策としては、今行っている対策に加えて、レンタサイクル店での美瑛ルール配布を義務化するとともに、旭川空港のレンタカー屋さんに協力してもらい、美瑛に行く予定のある利用客については、美瑛ルールを配布するような取り組みも必要と思います。
 
 そのためには、美瑛ルールの冊子をかなりの部数用意しなければらならなくなりますので、その予算確保も必要となります。


 最後の、ニュースにて広く発信する点については、ここ5年以内の出来事でいうと、嵐の木問題、哲学の木問題、インスタ映え問題などが各種報道で取り上げられることにより、日本国内にはある程度知れ渡ってきたように思います。

 しかし、まだまだ不十分。

 罰則規定のある条例として、美瑛町の強い決意を表明し、それをニュースとして広く発信するという取り組みが絶対に必要である、と私は考えています。

 前回のブログでご紹介した鳥取砂丘の落書き問題も条例で罰金を定めていますが、「HAPPY BIRTHDAY NATALIE」という落書き問題を契機に、ニュースとして広く発信してもらうために、メディアに取り上げてもらったのではないかと思います


 次に、②美瑛ルール遵守です。

 これは、美瑛ルールを守るという抑止力を強化する、もしくは育てるということに他ありません。

 私は、この抑止力には、以下の4つに分類できるのではないかと思います。
(1)取り締まり等による抑止力の強化
(2)美瑛ルール違反がもたらす農業被害発生リスク啓蒙することによる抑止力の育成
(3)美瑛や農業等に関心を持つことによる抑止力の育成(美瑛ブランド力の強化)
(4)いわゆるインスタ映え対策



(1)取り締まり等による抑止力の強化について

 今まで対策としてものとしては、立入禁止の看板設置、観光アドバイザーによるパトロール等が挙げられます。

 立入禁止の看板設置の抑止力に対する課題は、「景色に夢中になり目に入らなかった」という以外にも、色々と課題があるのは、前々回のブログに掲載したとおりです。

 観光アドバイザーによるパトロールは、「観光アドバイザーがいない場所では抑止力となる可能性が低い」「見つかっても注意されるだけなので、抑止力としてはあまり高くない」という課題があると思います。

 遠くで観光アドバイザーに注意されていたのに、私の近くに来たら、また農地に侵入したようなケースを何度か見ていますので、「旅は恥の書き捨て」と思っている人は、1~2回注意された程度では、強い抑止力にはならないのかもしれません。

 よって、罰則を伴う条例制定(次回のブログに掲載予定)や、スマホの監視カメラ化対策(前回のブログ)など、抑止力を強化する別の方法を取り入れる必要があるのではないかと考えています。


(2)美瑛ルール違反がもたらす農業被害発生リスク啓蒙することによる抑止力の育成について

 農地に侵入することによる影響について、美瑛町観光協会では以前、以下のようなパンフレットをホームページに掲載していました。
7935299c

 もちろん、美瑛ルールにも同様の記載があります。

 しかし、これらの情報だけで、果たして抑止力の育成することができるでしょうか?

 ルールとしては理解できますが、なぜ畑に入ってはいけないかを、腹に落として納得できるでしょうか?

 輪作や土壌検診・植物検診、農薬散布、品種改良などの日常的な取り組みを紹介するとともに、これら対策を行っても防げない理由を解説する。

 耕作放棄地は、雑草が増えて、やがて害虫の宝庫になってしまうため、離農等で空き地のように見える雑草地に踏み入った場合、靴底に害虫が付着し、それが周辺の圃場に拡散されてしまうリスクを解説する。

 このような具体的な農業被害発生のリスクを分かりやすく説明することにより、多くの人が腹に落として納得できるようにすることが、農業への関心と抑止力のさらなる育成に繋がるのではないかと思います。


(3)美瑛や農業等に関心を持つことによる抑止力の育成(美瑛ブランド力の強化)

 私は、この点については、今の美瑛町の政策を、そのまま推し進めていって欲しいと思っています。

 特に昨年実施された「写真家と美瑛の丘を巡る写真ツアー」は、とても良い取り組みだと思います。

 以下の計3回実施されたとのことですが、(2)(3)の抑止力育成には、とても効果があると思います。
  1. 6月20日~22日 中西 敏貴 氏
 参加者は限られていますが、今後とも末永く実施していくことにより、多くの方々に参加いただきたいと思います(私も日程調整ができれば、是非参加したいと思っています)。

 また、2005年に発足した「日本で最も美しい村」連合も「美瑛や農業等に関心を持つことによる抑止力の育成(美瑛ブランド力の強化)」に繋がる活動だと思いますし、ビエイティフル(美瑛町公式ブランド)等の取り組みも、美瑛ブランド力強化に繋がるでしょう。

 あとは、美瑛ヘルシーマラソンのかけ丸くんに取って代わり、美瑛の農業や美しい景観をイメージするような新たなゆるキャラを作り、そのゆるキャラが「農地に入ってはいけない理由」を多言語で説明する(動画をYoutubeで流すなど)というような方法も効果があるかもしれません。
 (かけ丸くんは、どう見てもマラソンのイメージしか湧きませんので)


(4)いわゆるインスタ映え対策

 農地への侵入行為・農地への侵入に疑いが持たれる行為を撮った写真をSNS等に投稿した場合、この投稿を見た人達に「農地に入って良いんだ」だとかの誤解を与えたり、「このようなインスタ映えする写真を自分も撮りたい」というような欲望を増長させることになりかねないのは、昨年のインスタ映え問題で指摘させて頂いた通りです。

 しかし、この点については、美瑛ルールにも掲載されていませんし、美瑛町観光協会の発信などでも見たことはありません。

 まずは美瑛ルールに「農地への侵入行為・農地への侵入に疑いが持たれる行為を撮った写真をSNS等に投稿すること。」を禁止する旨の記載を、是非とも追加すべきと思います。
 また、「農地への侵入に疑いが持たれるような写真を投稿する場合、公道から撮影しているのではあれば、それを明記すること。」もルールに加えるべきでしょう。
 また、「地権者の許可を得ている場合は、その旨を明記すること。」もルールに加えるべきでしょう(観光客が地権者の許可を得て入るケースは殆どないと思いますが)。

 このようなSNS等のインターネット利用におけるマナー/モラル問題は、今まで全く想定されていなかったものと思いますので、今の日本の法令で罰則を科すことはできないのではないかと思います。

 であれば、条例として美瑛町が世に発信すべきなのではないでしょうか?

 そして、美瑛ルール違反として投稿を削除する勧告に従わなかった場合、条例により罰則規定(過料)を設けるようにすべきではないでしょうか?

 美瑛町観光協会をはじめとする多くの公的機関が、このインスタ映え問題に何も発信しないのも、その根拠となるルールが存在しないからではないかと思います。

 今のまま放置したら、農地に侵入したインスタ映えする写真が「農地に入って良いんだ」との誤解を生み、「このようなインスタ映えする写真を自分も撮りたい」というような欲望を増長させしまい、次々と農地に侵入して写真を撮る人達が増殖してしまう、そのような最悪の結果を招きかねません。

 よって、まずは美瑛ルールにこのインスタ映え問題を記載することを、強く希望します。

 また、インスタ映え以外にも、例えば数年前にSTVが、牧草ロールのある農地に芸人を入れて、ロールに乗っている映像を放送した番組がありました。

 もちろん、撮影時は地権者の許可を得ていると思いますが、このような映像が誤解を招いてしまう可能性があることは否定できません。

 よって、このような行為も美瑛ルールで禁止すべき事項と思います。


 このようなルールを設けたり罰則規定を設けるのであれば、それを監視する人が必要となります。

 私が昨年見つけた例の1つとしては、ウェディング写真撮影事業者がInstagramにカップルを農地に侵入させた写真を掲載していたので、Instagram写真を削除してもらうとともに、彼らのホームページにも同じ写真が掲載されていましたので、そちらも削除してもらうようお願いしました。

 例えば、「#biei」「#美瑛」などのハッシュタグで数百件の投稿を検索しても、2時間程度あれば十分にできますし、その中で10件くらい違反投稿があったとしても、その対応は半日程度あれば十分可能と思います。

 よって、このような活動は、決して毎日行う必要はなく、週1日程度のワークロードで十分かと思います。


 次に、③目標達成に向けて評価指標を定量的に設定するための政策についてです。

 農地への侵入実態調査の実施については、前回のブログに記載したとおりです。

 美瑛ルール認知度アンケートの実施については、「美瑛時間プレゼントキャンペーン」のアンケートの中で実施する、SNS等で実施する(例えばTwitterでのアンケート調査など)、各宿泊施設等にアンケート用紙を配布して実施するなど、幾つかの情報収集手段を講じて行うべきと考えています。

 このようにして美瑛ルールの認知度を行い、定量的な評価を行っていくことで、美瑛ルールの認知度を把握し、更なるアクションプランを練っていくことが必要と思います。


 以上が、①~③の政策案についての説明です。

 以上に挙げたうち、美瑛町内で既に検討されているような政策もあると思いますが、広報びえいにも、びえいの議会にもそのような情報公開は一切なされていません。

 よって、あえて今回、このような形で提案させて頂きました。


 また、これら政策案の実施には予算が必要となりますが、これはふるさと納税を活用すべきでなはいかと考えています。

 「美瑛の丘の美しい農業景観を後世に残していくために、美瑛ルールを知ってもらい、守ってもらうための事業」という事業を新たにふるさと納税の対象事業として設定すれば、日本全国にいる多くの美瑛ファンに賛同してもらえ、数千万円くらい集めることができるのではないでしょうか?

 今まだ私は「自然環境及び景観保全、形成に関する事業」にふるさと納税していましたが、この事業への投資しても、恐らくハードウエアがほとんどと使われてきたと思いますので、今思い起こすと残念でなりません。


 私は、①美瑛ルールを認知していて、②美瑛ルール遵守できないというのは、農地に侵入したいという欲望が抑止力を上回っている場合だと考えています。

 人の欲望(例:インスタ映えする写真)は千差万別であり、小さな田舎町の政策として人の欲望をコントロールすることは難しいでしょう。

 よって、欲望<抑止力となるよう抑止力を強化・育成していくことが、基本的な政策として必要なことは言うまでもありません。

 それに加え、欲望を他に向けるという代替策は、同時に進めていくべきと思います。

 いわゆる「オーバーツーリズム」対策の1つである分散化政策です。

 10年位前から、美瑛町は青い池を観光地化してきました。

 これは、新たな観光スポットの開拓というだけでなく、美瑛の丘(私有地である農地)のオーバーツーリズム対策として、丘から離れた白金に観光客を分散化するという狙いも絶対にあったはずです。

 しかし、青い池がAppleの壁紙として採用されるなど想定外の人気となってしまったため、青い池がオーバーツーリズムとなってしまい、「青い池を見に来た観光客が、帰りに美瑛の丘を立ち寄る」というような、当初想定した分散化を覆す流れができてしまいました。

 これらオーバーツーリズム対策は、美瑛町だけでなく富良野美瑛広域観光推進協議会などでも既に検討されているかと思いますが、決してこの地域に限ったことではなく、京都や鎌倉、富士山などの多くの観光地が抱える、観光立国ニッポンとしての喫緊の課題ですね。

 ひとつの案にしか過ぎませんが、例えば美瑛町が所有する土地を農地として開拓し、小麦畑の中に入って撮影できるような場所を提供するというのも、もしかしたらオーバーツーリズム対策になるかもしれません。

 無料にすると、またここがオーバーツーリズムになってしまうので、相応の料金(30分3000円など)を徴収して入場させることにより、「小麦畑の中からインスタ映えする写真を撮る」「ヒマワリに囲まれたインスタ映えする写真を撮る」という欲望をかなえてあげるという方法です。

 これにより、私有地である農地で欲望を満たすというを、ここで代替させてあげることで、欲望<抑止力になるよう仕向けることができるのではないかということです。

 ただ危険なのは、ここが良ければ他も良いのでは?、と誤解されてしまうリスクがあるので、柵などで厳重に囲って、ここが特別な地であることをきちんと認知させることが、必須要件になると思います。

 また、長居されると回転が悪くなってしまいますので、例えば30分を限度にするとか(敷地面積に依存)、ここで撮った写真をSNSに投稿する場合、場所を明記するなどのルールを明確にする等により、インスタ映え問題発生を抑止するとともに、ここが特別な地であることを認知してもらう等、検討すべき課題はたくさんあると思います。

 (そもそも、美瑛町がどれだけ農地に適した土地を所有しているかが大前提となりますが)

 軌道に乗るようであれば、入場を時間割性にして、冒頭の数分間で指導員等による美瑛ルールの説明を行うようなことが望ましいと思います(多言語対応をどうするかが課題ですが)。


 また、このオーバーツーリズムの分散化対策として、喫緊の課題は、冬のクリスマスツリーの木周辺の大混雑問題です。

 青い池のライトアップにより、冬の観光客が増えているのは事実でしょう。

 北海道観光入込客数調査報告書の統計によると、2010年の12月~3月の観光客入込数が11万7千人であったのに対し、昨年は34万5千人で、何と3倍近くも増えています。

 しかし、ライトアップは夜間だけのため、観光バスの多くが、特に晴れた日の夕方には、クリスマスツリーの木に行って、日没後に青い池のライトアップに行くというようなルートが確立してしまった気がしてなりません。

 いわゆるクリスマスツリーの木のオーバーツーリズム問題です。

 昨年のマイルドセブンの丘のカラマツ林伐採により、冬の夕方の観光スポットが少なくなってしまったのも、その原因の一つでしょう。

 美瑛町は、早急にクリスマスツリーの木以外の冬の観光目玉を提案する必要があると思うとともに、もし提案できないのであれば、来年はライトアップを中止することも視野に入れて検討すべきではないでしょうか?
 (2010年比3倍の冬の観光客入込数が、3倍の経済効果を美瑛町に生んでいるかの検証も含めて)


 次回は「美瑛の丘の美しい農業景観を後世に残していくために」シリーズ最終回のブログでは、今まで3回にわたって提案させて頂いた内容を、条例のたたき台として提案させて頂きたいと思います。


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