2017年7月に、美瑛町畑侵入条例を提案させて頂いてから約1年半、私自身は法律の素人(一応、法学部卒ですが...)ではありますが、仕事や丘めぐりの間に、コツコツと法律や条例等を勉強し、条例のたたき台を作成しましたので、当ブログで公開させて頂きたいと思います。
しかし、いきなり条例(案)を掲載するのも唐突すぎますので、今回より『美瑛の丘の美しい農業景観を後世に残していくために』と題して、あくまで私の個人的な意見ではありますが、4回に分けて、以下の私からの提案を記載させて頂きたいと思います。
【第1回】美瑛ルールについて考える
【第2回】スマホが美瑛の未来を担う
【第3回】美瑛ルールを効率的に広めるには?
【最終回】美瑛町農地無断侵入禁止条例(案)
【平成29年第4回定例会(2017年6月22日~23日)】「農業と観光の進め方」に対する浜田町長答弁
ここに記載されている「新たな美瑛独自のルールづくり」が、昨年制定された通称『美瑛ルール』です。
この美瑛ルールは、上の写真のようなパンフレットとして美瑛町内各施設に置いてあるとともに、美瑛町公式サイトおよびNPO美瑛町写真映像協会にて公開されています。
風景写真家の第一人者、前田真三氏の「麦秋鮮烈」等の作品により、景勝地として一躍全国的に有名になった『丘のまち美瑛』。
前田真三氏の作品の中で私が一番好きなのが、神秘の黄昏。
この作品は公道からの撮影ではなく、私有地(恐らく、農作業車用の私道)からの撮影です。
前田真三氏は、農家の方々との関係づくりをとても大切にされていた方で、日頃から撮影場所の提供などでお世話になっている農家さんに、菓子折りを持っていくなどの努力をされていたそうです。
だからこそ、このように私有地からの撮影ができたのでしょう。
その後、前田真三氏の作品が写真集や写真雑誌、ポスターなどで公開されるようになるにつれて、全国各地より風景写真愛好家が訪れるようになりました。
また、車のCMやタバコのCM・パッケージで使われたロケ地を、「ケンとメリーの木」「マイルドセブンの丘」「セブンスターの木」と名付けられて観光スポットとして紹介されるようになったり、ドラマや映画のロケ地になったりすることで、徐々に多くの観光客が訪れるようになりました。
そうです。美瑛の丘は観光地として整備された場所に行政や民間が観光客を集めようとしたのではなく、農家さんたちが農業を営む土地に、その美しい農業景観が口コミやメディアなどを通して徐々に広まり、多くの観光客やカメラマンが訪れるようになったという、全国的に見ても珍しい場所です。
元々、観光地として多くの人々が訪れることを想定していなかったこともあり、その結果、観光客やカメラマンによる農地への無断侵入が頻発し、25年以上にも及び長い間、全く解決への目途が立たない問題として、農業と観光の共存に向けて、重くのしかかっています。
特にここ数年、外国人観光客の急増やインスタ映え問題などにより、より状況は酷くなっているように思われます。
そして昨年11月、旭川空港の新国際線ターミナルの完成により、今年から国際線の乗り入れも増えるでしょうから、さらにこの問題に拍車をかけることにもなりかねません。
詳しくは、美瑛町在住の方で、美瑛の地域課題を未来の視点から研究するソーシャルネット「NorthQuest びえい未来ネット」さんが簡潔にまとめていますので、以下をご覧ください。
(No.39) 25年たって未解決、美瑛~観光客の農地侵入
(No.40) 風が吹けば桶屋が儲かる、美瑛~農業と観光の事例研究
私も全く同意見で、
・美瑛ルールをSNS等を通じて世界に発信
・観光アドバイザーによる監視
・農地への侵入禁止の看板設置
だけでは、この問題を永久に解決することは不可能だと思います。
今から約5年ほど前、美瑛町観光協会のホームページに以下の文書が掲載されました。
今までは、農地への無断侵入を「観光マナー」の問題としてしか取り上げてこなかった美瑛町が、旭川東警察署との連名で、犯罪(軽犯罪法第1条32号違反)として取り上げるようになったことです。
ようやく、美瑛町もこの問題解決に向けて本気になったかと期待しましたが、1年も経たないうちに、この文書はホームページから消えてしまいました。
なぜでしょうか?
警察や検察の捜査にも関わる問題なので、今後とも明らかにされることはないかもしれませんが、私は以下の2点が理由ではないかと推測しています。
①軽犯罪法第1条32号の法令自体の不備
「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」を文面通り解釈すると、以下のようになるかと思います。
【入ることを禁じた場所】立入禁止であることの意思表示が示されている場所(看板、塀やロープでの囲い込みなど)
【他人の田畑】文字通り、私有地である農地
【正当な理由がなくて】違法阻却事由のないこと。具体的には以下に該当する行為でないこと。
・正当行為(刑法35条) - 法令行為・正当業務行為
(例1)JA職員が、土壌検診のために農地に立ち入って土壌を採取した場合
(例2)カルビー職員が、契約農家の馬鈴薯の生育状況を見るために農地に立ち入った場合
また、公道に熊が出たため農地に入って身を隠した等のような場合は、緊急避難として認められることでしょう。
プロ・カメラマンが良い写真を撮るために農地に無断侵入するのは、もちろん正当行為(正当業務行為)には該当しません。
農地から撮ったら必ず良い写真になるとの根拠が全くないからです。
しかし、日本の刑法では「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」(38条1項)という条文があるため、過失では罪に問えません。
加え、この軽犯罪法第1条32号のうち「他人の田畑」への侵入には、重大な不備があると言われています。この点については、住居侵入罪である刑法第130条と比較すると、明確になります。
つまり、住居侵入罪の場合は、たとえ過失で侵入したとしても、退去要求に応じなかった場合は、刑法違反になるのに対し、田畑侵入の場合はそのような条文がないため、田畑から退去しなかったとしても、故意に侵入したことが認められない限り、罰することができないのです。
農地への無断侵入者が「立入禁止の看板が見えなかった」という常套句を言い続けている限り、軽犯罪法違反で罰則規定を適用することができないのです。
故意性を客観性をもって確実に立証するためには、立入禁止の看板だけでなく、農地を柵やロープでロックアウトする必要がありますが、広大な農地でそんなことできませんよね。
たとえ、美瑛町が大量の税金を投入して柵で囲ったとしても、美しい農業景観を著しく阻害してしまうことになってしまいますので。
このような事情から、特別な事情がない限り、農地への無断侵入を旭川地方検察庁が「微罪処分」としているのかもしれません。
②刑事訴訟法第246条に基づく微罪処分
微罪処分とは、警察が犯罪を犯した事件を検察に送致することなく、刑事手続を警察段階で終了させる日本の刑事手続を言います。
刑事訴訟法第246条で「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。」と規定されています。
同条にいう「検察官が指定した事件」の具体的内容は、一定の犯罪の種類(例えば農地侵入等)や内容(被害の程度等)、被疑者の情状(前科等)などを考慮して各地方検察庁が定めた基準によって決まり、これを微罪処分と言います。
つまり、警察に捕まっても送検されることなく、注意のみで釈放ということです。
微罪処分の詳細は、犯罪捜査規範第198条~200条に規程されています。
微罪処分の最たる例は、交通反則金です。
軽微な道路交通法違反を、全て刑事訴訟法の手続きに従って処理していたら、検察や裁判所がすぐにパンクするからです。
交通反則金は日本全国的な微罪処理としてルールづけされていますが、各地方検察庁が定める微罪処分も、各地方検察庁がパンクしてしまうような軽微でかつ大量に発生することが想定される事件を、微罪処分として定義している例が多いそうです。
もし美瑛町における農地への無断侵入を、軽犯罪法違反として刑事訴訟法の手続きに従って処理したら、旭川地検がパンクしてしまうことは、火を見るよりも明らかですよね。
(私の個人的な見解ですが、夏季には毎日数百件程度、7月下旬の週末には毎日数千件程度の農地への無断侵入が発生していると思っていますので)
そのような理由で、旭川地検より旭川東警察署に対して、農地への無断侵入は特別な理由がない限り微罪事件として扱う旨の通達があったのではないか、というのが私の推測です。
旭川東警察署も、免罪事件で処理したとしても、犯罪捜査規範第199条に従って微罪処分事件報告書として地検に毎月提出しなければならないので、農地への無断侵入を捕まえても罰則することができず、報告書だけ作成するというモチベーションが上がらない業務負担がのしかかってきますし...
観光客の多い夏季には、交通事故も多発しますし、農作物の盗難被害も毎年のように発生しているようですので、そもそも警察に農地への無断侵入を取り締まるようなパワーは殆ど残されていないというのが実情でしょう。
以上の理由により、軽犯罪法違反での取り締まりに現実性は殆どないことを理解しましたので、美瑛町が独自に条例を設定し、罰則規定を設けて、警察や検察の力を借りずに町独自に取り締まるしか、この問題を解決できないであろうと考えるようになりました。
冒頭に、浜田町長の答弁として「美瑛ルールをSNS等を通じて世界に発信」が今の美瑛町の考えであることを紹介しましたが、はたしてこれでこの問題を解決できるでしょうか?
現時点で、美瑛町観光協会のFacebookのフォロワーは2万人弱、Twitterのフォロワーは9千人弱です。Twitterのフォロワーさんの大多数は、Facebookのフォロワーでもあると思いますので、美瑛町観光協会が発信したとしても、年間の美瑛町に訪れる観光客の1%程度にしか伝わらないでしょう。
世界に発信するということは、少なくてもアジア圏30億人に対して発信することになると思いますので、SNSを通して美瑛町は広告宣伝費をどれだけかけるつもりなのでしょうか?
もしくは、広告宣伝費を使わずして、どのように広めるのでしょうか?
私の提案は、美瑛町畑侵入条例のブログにも記載したとおり、この問題解決に向けての美瑛町の強い意思を罰則規定のある条例として世に発信することです。
美瑛ルールには、ありきたりの観光マナーしか記載されていませんので、ニュースにとりあげられることは殆どないでしょうし、今まだ行ってきた観光マナー対策を、ただ単にまとめただけですので、この問題を解決しようという強い意志がほとんど感じられません。
しかし、問題解決に向けての強い意思を表明するような罰則規定のある条例でしたら、きっと多くのニュースやメディアに取り上げてもらい、SNSの広告宣伝費を使わなくても、多くの方々に広めることができるのではないかと考えています。
さて、話は今日の本題である美瑛ルールに戻ります。
この美瑛ルール、皆さんはどのように感じたでしょうか?
私の意見としては、多くの方々に読んでもらうためには、必要な情報を分かりやすくコンパクトにまとめなければならないため、美瑛に初めて来る多くの観光客向けとしては、この内容で良いかと思います。
しかし、美瑛のリピーター向けとしては、これでは内容が不十分だと思われますし、美瑛で観光客向けの事業を営む方々、美瑛に観光で来る事業者向けに、別の視点からのルールが必要と考えます。
また、後日提示させて頂く予定の罰則規定のある条例を制定するためには、罰則とする行為の詳細を取り決めていく必要があります。
具体的には、美瑛ルールについてそれを補足するような詳細ルール、観光事業者向けに必要と考えられるルール、そして、なぜルールを守らなければならないかを農業を守るという観点からの分かりやすく具体的な説明です。
現在の美瑛ルールを補足すべきルール、新たに付け加える必要がある観光事業者向けルールとして、私の提案は以下の6点です。
1.私有地である農地の定義を明確にする。
2.農地に人が立ち入ることしか禁止していないように見受けられるので、自転車や車などの車両、三脚などの撮影機器、ペットを畑に入れて撮影する等の行為も含むことを明確にする。
3.農地への立ち入り禁止を個人の責務とするだけでなく、撮影ツアー等におけるツアー開催者の責務を明確にする。
①農地への無断侵入を行わないことを、ツアー参加者に周知すること
②撮影ツアー等の最中に、ツアー参加者による農地への立ち入りが行われよう監視すること
③もし農地への無断侵入が行われた場合はそれを抑止すること
4.地主への許可を得て農地に立ち入る際のルールを明確にする。
①農地に立ち入る際、許可を得ていることを証明できる情報を携帯すること
②地主への許可を得る際、許可する期間を明記してもらうこと
③許可する期間の明記がない場合のルールを明確にすること(例えば発行日より7日以内など)
④立ち入る際、地主の指示に従うこと(靴カバー装着など)
⑤農地へ立ち入りに対する追従者が発生するリスクを考慮すること(他の観光客がいる前で農地等へ立ち入りは行わない)
⑥農地へ立ち入りに対する追従者が発生した際に、適切な対処を行うこと(追従者に対して立ち入りを抑止する責務を負う)
5.センターラインがない幅員の狭い道路について、多くの観光客等が訪れることにより町民等の日常生活に影響を及ぼすことが想定される場合、たとえ公道であっても観光バス等の通行制限道路として明示すること。
6.インスタ映え問題に対応するため、美瑛ルールに「農地への侵入行為・農地への侵入に疑いが持たれる行為を撮った写真をSNS等に投稿するのを禁止」という旨の記載すること。
以上のち、1番重要で且つ難題なのが「私有地である農地の定義」でしょう。
この点について色々と考えてみましたが、許可なく入ってよい場所を定義し、それ以外は「私有地である農地」として扱うという方法です。
以下、特別な許可なしに立ち入って良い場所をリストアップしてみました。
もし未舗装道路から撮影したとして、観光アドバイザーの方に注意された時、それがもし町道であれば、誰も有する公道を通行する権利への侵害となります。
美瑛ルール制定にあたり、公道を明確にし地図に記載することが、何よりも重要であると私は考えています。
この作業は、美瑛町役場でしかできない仕事であり、美瑛ルールを正確かつ適切に運用する上で、早急に取り掛かるべき最も重要な作業だと思います。
また、公道と農地との境界線も明確に定義する必要があります。
これについては、文字で定義するのはなかなか難しいと思いますので、具体的な事例を10点くらい写真で提示するのが良いかと思います。
昨年まで、マイルドセブンの丘は、舗装された公道と農地の間に、明確な境界線となる溝があるにもかかわらず、農地の中に観光スポットである看板を設置し、約2m先の農作物が栽培されている場所まで、事実上立ち入りを許していました。
著名な観光スポットでこのような美瑛ルールに反する運用を行ってしまったため、観光客の多くは「舗装道路を外れて土の部分にも立ち入ってよいのでは?」と誤解してしまったことでしょう。
もしかしたら、マイルドセブンの丘における美瑛ルールに反した運用が、他の農地への無断侵入を促す結果になってしまっていたかもしれません。
既に観光スポットである看板は外されていると思いますので、今年からは道路脇の溝を境界線として、本来の美瑛ルールに法った運用がなされることを望みます。
また、観光バス等の通行制限についても、既にクリスマスツリーの木の前の町道では、晴れた日の夕方はかなり問題になっていると思いますので、通行制限を検討すべきと思っています。
個人的には、赤羽の丘に侵入してくる宮本バス(美瑛町の観光バス)も、あんな狭い道に侵入するなんて非常識だと思いますので、是非制限してほしいと思っています。
次回は、「スマホが美瑛の未来を担う」と題して、観光アドバイザーによるパトロールを支援し、農家さんにもメリットがあるような仕組みを提案したいと思います。
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しかし、いきなり条例(案)を掲載するのも唐突すぎますので、今回より『美瑛の丘の美しい農業景観を後世に残していくために』と題して、あくまで私の個人的な意見ではありますが、4回に分けて、以下の私からの提案を記載させて頂きたいと思います。
【第1回】美瑛ルールについて考える
【第2回】スマホが美瑛の未来を担う
【第3回】美瑛ルールを効率的に広めるには?
【最終回】美瑛町農地無断侵入禁止条例(案)
今回のブログのテーマは『美瑛ルールについて考える』です。
【平成29年第4回定例会(2017年6月22日~23日)】「農業と観光の進め方」に対する浜田町長答弁
①丘のまち美瑛の美しさと写真文化を国内のみならず世界に発信していき、先人たちの農林業の営みが築いた景観を守り育むため、写真に残して次の世代に引き継ぎ、写真による情報発信や地域の人々との交流ができるまちづくりを目指す。
②農業と観光業との折り合いなどの課題に向き合い、今日まで培ってきた写真文化を通じて、美しい景観を将来に引き継ぐため、新たな美瑛独自のルールづくりについて、SNS等を通じて世界に発信することを目指す。
ここに記載されている「新たな美瑛独自のルールづくり」が、昨年制定された通称『美瑛ルール』です。
この美瑛ルールは、上の写真のようなパンフレットとして美瑛町内各施設に置いてあるとともに、美瑛町公式サイトおよびNPO美瑛町写真映像協会にて公開されています。
風景写真家の第一人者、前田真三氏の「麦秋鮮烈」等の作品により、景勝地として一躍全国的に有名になった『丘のまち美瑛』。
前田真三氏の作品の中で私が一番好きなのが、神秘の黄昏。
この作品は公道からの撮影ではなく、私有地(恐らく、農作業車用の私道)からの撮影です。
前田真三氏は、農家の方々との関係づくりをとても大切にされていた方で、日頃から撮影場所の提供などでお世話になっている農家さんに、菓子折りを持っていくなどの努力をされていたそうです。
だからこそ、このように私有地からの撮影ができたのでしょう。
その後、前田真三氏の作品が写真集や写真雑誌、ポスターなどで公開されるようになるにつれて、全国各地より風景写真愛好家が訪れるようになりました。
また、車のCMやタバコのCM・パッケージで使われたロケ地を、「ケンとメリーの木」「マイルドセブンの丘」「セブンスターの木」と名付けられて観光スポットとして紹介されるようになったり、ドラマや映画のロケ地になったりすることで、徐々に多くの観光客が訪れるようになりました。
そうです。美瑛の丘は観光地として整備された場所に行政や民間が観光客を集めようとしたのではなく、農家さんたちが農業を営む土地に、その美しい農業景観が口コミやメディアなどを通して徐々に広まり、多くの観光客やカメラマンが訪れるようになったという、全国的に見ても珍しい場所です。
元々、観光地として多くの人々が訪れることを想定していなかったこともあり、その結果、観光客やカメラマンによる農地への無断侵入が頻発し、25年以上にも及び長い間、全く解決への目途が立たない問題として、農業と観光の共存に向けて、重くのしかかっています。
特にここ数年、外国人観光客の急増やインスタ映え問題などにより、より状況は酷くなっているように思われます。
そして昨年11月、旭川空港の新国際線ターミナルの完成により、今年から国際線の乗り入れも増えるでしょうから、さらにこの問題に拍車をかけることにもなりかねません。
詳しくは、美瑛町在住の方で、美瑛の地域課題を未来の視点から研究するソーシャルネット「NorthQuest びえい未来ネット」さんが簡潔にまとめていますので、以下をご覧ください。
(No.39) 25年たって未解決、美瑛~観光客の農地侵入
(No.40) 風が吹けば桶屋が儲かる、美瑛~農業と観光の事例研究
私も全く同意見で、
・美瑛ルールをSNS等を通じて世界に発信
・観光アドバイザーによる監視
・農地への侵入禁止の看板設置
だけでは、この問題を永久に解決することは不可能だと思います。
今から約5年ほど前、美瑛町観光協会のホームページに以下の文書が掲載されました。
今までは、農地への無断侵入を「観光マナー」の問題としてしか取り上げてこなかった美瑛町が、旭川東警察署との連名で、犯罪(軽犯罪法第1条32号違反)として取り上げるようになったことです。
ようやく、美瑛町もこの問題解決に向けて本気になったかと期待しましたが、1年も経たないうちに、この文書はホームページから消えてしまいました。
なぜでしょうか?
警察や検察の捜査にも関わる問題なので、今後とも明らかにされることはないかもしれませんが、私は以下の2点が理由ではないかと推測しています。
①軽犯罪法第1条32号の法令自体の不備
「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」を文面通り解釈すると、以下のようになるかと思います。
【入ることを禁じた場所】立入禁止であることの意思表示が示されている場所(看板、塀やロープでの囲い込みなど)
【他人の田畑】文字通り、私有地である農地
【正当な理由がなくて】違法阻却事由のないこと。具体的には以下に該当する行為でないこと。
・正当行為(刑法35条) - 法令行為・正当業務行為
・正当防衛(刑法36条1項) - 急迫不正の侵害に対して、自己または第三者の権利を守るために行った行為
・緊急避難(刑法37条1項) - 自己または第三者に対する現在の危難を避けるため、侵害以外に対して行った避難行為
・自救行為
・被害者の同意
例えば、以下のような場合は、正当行為(正当業務行為)として罰せられないことになります。(例1)JA職員が、土壌検診のために農地に立ち入って土壌を採取した場合
(例2)カルビー職員が、契約農家の馬鈴薯の生育状況を見るために農地に立ち入った場合
また、公道に熊が出たため農地に入って身を隠した等のような場合は、緊急避難として認められることでしょう。
プロ・カメラマンが良い写真を撮るために農地に無断侵入するのは、もちろん正当行為(正当業務行為)には該当しません。
農地から撮ったら必ず良い写真になるとの根拠が全くないからです。
しかし、日本の刑法では「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」(38条1項)という条文があるため、過失では罪に問えません。
加え、この軽犯罪法第1条32号のうち「他人の田畑」への侵入には、重大な不備があると言われています。この点については、住居侵入罪である刑法第130条と比較すると、明確になります。
【刑法第130条】(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
つまり、住居侵入罪の場合は、たとえ過失で侵入したとしても、退去要求に応じなかった場合は、刑法違反になるのに対し、田畑侵入の場合はそのような条文がないため、田畑から退去しなかったとしても、故意に侵入したことが認められない限り、罰することができないのです。
農地への無断侵入者が「立入禁止の看板が見えなかった」という常套句を言い続けている限り、軽犯罪法違反で罰則規定を適用することができないのです。
故意性を客観性をもって確実に立証するためには、立入禁止の看板だけでなく、農地を柵やロープでロックアウトする必要がありますが、広大な農地でそんなことできませんよね。
たとえ、美瑛町が大量の税金を投入して柵で囲ったとしても、美しい農業景観を著しく阻害してしまうことになってしまいますので。
このような事情から、特別な事情がない限り、農地への無断侵入を旭川地方検察庁が「微罪処分」としているのかもしれません。
②刑事訴訟法第246条に基づく微罪処分
微罪処分とは、警察が犯罪を犯した事件を検察に送致することなく、刑事手続を警察段階で終了させる日本の刑事手続を言います。
刑事訴訟法第246条で「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。」と規定されています。
同条にいう「検察官が指定した事件」の具体的内容は、一定の犯罪の種類(例えば農地侵入等)や内容(被害の程度等)、被疑者の情状(前科等)などを考慮して各地方検察庁が定めた基準によって決まり、これを微罪処分と言います。
つまり、警察に捕まっても送検されることなく、注意のみで釈放ということです。
微罪処分の詳細は、犯罪捜査規範第198条~200条に規程されています。
微罪処分の最たる例は、交通反則金です。
軽微な道路交通法違反を、全て刑事訴訟法の手続きに従って処理していたら、検察や裁判所がすぐにパンクするからです。
交通反則金は日本全国的な微罪処理としてルールづけされていますが、各地方検察庁が定める微罪処分も、各地方検察庁がパンクしてしまうような軽微でかつ大量に発生することが想定される事件を、微罪処分として定義している例が多いそうです。
もし美瑛町における農地への無断侵入を、軽犯罪法違反として刑事訴訟法の手続きに従って処理したら、旭川地検がパンクしてしまうことは、火を見るよりも明らかですよね。
(私の個人的な見解ですが、夏季には毎日数百件程度、7月下旬の週末には毎日数千件程度の農地への無断侵入が発生していると思っていますので)
そのような理由で、旭川地検より旭川東警察署に対して、農地への無断侵入は特別な理由がない限り微罪事件として扱う旨の通達があったのではないか、というのが私の推測です。
旭川東警察署も、免罪事件で処理したとしても、犯罪捜査規範第199条に従って微罪処分事件報告書として地検に毎月提出しなければならないので、農地への無断侵入を捕まえても罰則することができず、報告書だけ作成するというモチベーションが上がらない業務負担がのしかかってきますし...
観光客の多い夏季には、交通事故も多発しますし、農作物の盗難被害も毎年のように発生しているようですので、そもそも警察に農地への無断侵入を取り締まるようなパワーは殆ど残されていないというのが実情でしょう。
以上の理由により、軽犯罪法違反での取り締まりに現実性は殆どないことを理解しましたので、美瑛町が独自に条例を設定し、罰則規定を設けて、警察や検察の力を借りずに町独自に取り締まるしか、この問題を解決できないであろうと考えるようになりました。
冒頭に、浜田町長の答弁として「美瑛ルールをSNS等を通じて世界に発信」が今の美瑛町の考えであることを紹介しましたが、はたしてこれでこの問題を解決できるでしょうか?
現時点で、美瑛町観光協会のFacebookのフォロワーは2万人弱、Twitterのフォロワーは9千人弱です。Twitterのフォロワーさんの大多数は、Facebookのフォロワーでもあると思いますので、美瑛町観光協会が発信したとしても、年間の美瑛町に訪れる観光客の1%程度にしか伝わらないでしょう。
世界に発信するということは、少なくてもアジア圏30億人に対して発信することになると思いますので、SNSを通して美瑛町は広告宣伝費をどれだけかけるつもりなのでしょうか?
もしくは、広告宣伝費を使わずして、どのように広めるのでしょうか?
私の提案は、美瑛町畑侵入条例のブログにも記載したとおり、この問題解決に向けての美瑛町の強い意思を罰則規定のある条例として世に発信することです。
美瑛ルールには、ありきたりの観光マナーしか記載されていませんので、ニュースにとりあげられることは殆どないでしょうし、今まだ行ってきた観光マナー対策を、ただ単にまとめただけですので、この問題を解決しようという強い意志がほとんど感じられません。
しかし、問題解決に向けての強い意思を表明するような罰則規定のある条例でしたら、きっと多くのニュースやメディアに取り上げてもらい、SNSの広告宣伝費を使わなくても、多くの方々に広めることができるのではないかと考えています。
さて、話は今日の本題である美瑛ルールに戻ります。
この美瑛ルール、皆さんはどのように感じたでしょうか?
私の意見としては、多くの方々に読んでもらうためには、必要な情報を分かりやすくコンパクトにまとめなければならないため、美瑛に初めて来る多くの観光客向けとしては、この内容で良いかと思います。
しかし、美瑛のリピーター向けとしては、これでは内容が不十分だと思われますし、美瑛で観光客向けの事業を営む方々、美瑛に観光で来る事業者向けに、別の視点からのルールが必要と考えます。
また、後日提示させて頂く予定の罰則規定のある条例を制定するためには、罰則とする行為の詳細を取り決めていく必要があります。
具体的には、美瑛ルールについてそれを補足するような詳細ルール、観光事業者向けに必要と考えられるルール、そして、なぜルールを守らなければならないかを農業を守るという観点からの分かりやすく具体的な説明です。
現在の美瑛ルールを補足すべきルール、新たに付け加える必要がある観光事業者向けルールとして、私の提案は以下の6点です。
1.私有地である農地の定義を明確にする。
2.農地に人が立ち入ることしか禁止していないように見受けられるので、自転車や車などの車両、三脚などの撮影機器、ペットを畑に入れて撮影する等の行為も含むことを明確にする。
3.農地への立ち入り禁止を個人の責務とするだけでなく、撮影ツアー等におけるツアー開催者の責務を明確にする。
①農地への無断侵入を行わないことを、ツアー参加者に周知すること
②撮影ツアー等の最中に、ツアー参加者による農地への立ち入りが行われよう監視すること
③もし農地への無断侵入が行われた場合はそれを抑止すること
【撮影ツアー等】カメラマン等による撮影ツアー、ネイチャーガイド等による散策ツアー、ガイド等によるサイクリングツアー、観光事業者等によるバスツアー、タクシーによる観光ツアー、ウェディング撮影ツアー等をいう。
4.地主への許可を得て農地に立ち入る際のルールを明確にする。
①農地に立ち入る際、許可を得ていることを証明できる情報を携帯すること
②地主への許可を得る際、許可する期間を明記してもらうこと
③許可する期間の明記がない場合のルールを明確にすること(例えば発行日より7日以内など)
④立ち入る際、地主の指示に従うこと(靴カバー装着など)
⑤農地へ立ち入りに対する追従者が発生するリスクを考慮すること(他の観光客がいる前で農地等へ立ち入りは行わない)
⑥農地へ立ち入りに対する追従者が発生した際に、適切な対処を行うこと(追従者に対して立ち入りを抑止する責務を負う)
5.センターラインがない幅員の狭い道路について、多くの観光客等が訪れることにより町民等の日常生活に影響を及ぼすことが想定される場合、たとえ公道であっても観光バス等の通行制限道路として明示すること。
6.インスタ映え問題に対応するため、美瑛ルールに「農地への侵入行為・農地への侵入に疑いが持たれる行為を撮った写真をSNS等に投稿するのを禁止」という旨の記載すること。
以上のち、1番重要で且つ難題なのが「私有地である農地の定義」でしょう。
この点について色々と考えてみましたが、許可なく入ってよい場所を定義し、それ以外は「私有地である農地」として扱うという方法です。
以下、特別な許可なしに立ち入って良い場所をリストアップしてみました。
① 公道
② 公園
③ 農地ではあるが、地主が立ち入りを認めている場所(地主の指示に従うこと)
・四季彩の丘
・ぜるぶの丘
・赤麦の丘(地主が指定する赤麦鑑賞時期に限る)
・新栄の丘ヒマワリ畑のトラクター用通路(地主が指定するヒマワリ鑑賞時期に限る)
・ファームズ千代田
・美瑛ファーム など
④ 農地ではあるが、本町が所有する場所
・四季の交流館裏手の丘(通称:天空のテラス)
・映画「愛を積むひと」ロケ地跡 など
⑤ 宿泊等を目的とした宿泊施設への立ち入り
⑥ 飲食等を目的とした飲食施設への立ち入り
⑦ 商品購入等を目的とした購買施設への立ち入り
⑧ 鑑賞等を目的とした鑑賞施設(写真ギャラリー、ガーデン、美術館など)への立ち入り
⑨ 参拝等を目的とした神社への立ち入り
⑩ その他、施設利用等を目的とした公共施設等への立ち入り
(国有林や大雪山国立公園については、私ではよく分からないため省いています)
この中で最も重要なのは、公道の定義でしょう。
公道は、特別な法律や条例がない限り、誰でも通行することができる道路です。
また、公道には、道路法に基づく国道、道道、町道に加え、農林水産省が指定する農道や林道、自転車道、自然歩道があります。
これらが明確に公道であることを記載した、美瑛マップは存在しますでしょうか?
Googleマップやびえいマップ、昭文社マップ、ゼンリン住宅地図などを見ましたが、公道と私道を明確に切り分けて表示されている地図は皆無でした。
よく美瑛町では「舗装された道路から撮影しましょう」などとSNSで発信されていますが、全長約650kmある町道のほぼ半分に該当する330kmは未舗装道路です。(国有林や大雪山国立公園については、私ではよく分からないため省いています)
この中で最も重要なのは、公道の定義でしょう。
公道は、特別な法律や条例がない限り、誰でも通行することができる道路です。
また、公道には、道路法に基づく国道、道道、町道に加え、農林水産省が指定する農道や林道、自転車道、自然歩道があります。
これらが明確に公道であることを記載した、美瑛マップは存在しますでしょうか?
Googleマップやびえいマップ、昭文社マップ、ゼンリン住宅地図などを見ましたが、公道と私道を明確に切り分けて表示されている地図は皆無でした。
もし未舗装道路から撮影したとして、観光アドバイザーの方に注意された時、それがもし町道であれば、誰も有する公道を通行する権利への侵害となります。
美瑛ルール制定にあたり、公道を明確にし地図に記載することが、何よりも重要であると私は考えています。
この作業は、美瑛町役場でしかできない仕事であり、美瑛ルールを正確かつ適切に運用する上で、早急に取り掛かるべき最も重要な作業だと思います。
また、公道と農地との境界線も明確に定義する必要があります。
これについては、文字で定義するのはなかなか難しいと思いますので、具体的な事例を10点くらい写真で提示するのが良いかと思います。
昨年まで、マイルドセブンの丘は、舗装された公道と農地の間に、明確な境界線となる溝があるにもかかわらず、農地の中に観光スポットである看板を設置し、約2m先の農作物が栽培されている場所まで、事実上立ち入りを許していました。
著名な観光スポットでこのような美瑛ルールに反する運用を行ってしまったため、観光客の多くは「舗装道路を外れて土の部分にも立ち入ってよいのでは?」と誤解してしまったことでしょう。
もしかしたら、マイルドセブンの丘における美瑛ルールに反した運用が、他の農地への無断侵入を促す結果になってしまっていたかもしれません。
既に観光スポットである看板は外されていると思いますので、今年からは道路脇の溝を境界線として、本来の美瑛ルールに法った運用がなされることを望みます。
また、観光バス等の通行制限についても、既にクリスマスツリーの木の前の町道では、晴れた日の夕方はかなり問題になっていると思いますので、通行制限を検討すべきと思っています。
個人的には、赤羽の丘に侵入してくる宮本バス(美瑛町の観光バス)も、あんな狭い道に侵入するなんて非常識だと思いますので、是非制限してほしいと思っています。
次回は、「スマホが美瑛の未来を担う」と題して、観光アドバイザーによるパトロールを支援し、農家さんにもメリットがあるような仕組みを提案したいと思います。
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ちなみに、私は地球岬の隣町の住民です。
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