哲学の木の地主の農家の方が、観光客の畑侵入を中心とした迷惑行為に対する抗議として赤いスプレーで木に×印を付けた件が反響を呼び、メディアにも取り上げられるようになりましたね。
 NHKニュースウォッチ9では、「入ってはダメとアピールをするなら、別の方法もあったのでは。ちょっと残念。」という観光客のコメントがありましたが、美瑛に来る観光客の多くは、このような状況を知ることなく観光に来てしまっているのでしょうね。

 美瑛では、前田真三氏が拓真館をオープンさせた1987年以降、観光客の急激な伸びとともに約四半世紀もの間、農家の方々はこのような観光客の迷惑行為に悩まされ続けています。

 そして昨年には『哲学の木の危機 美瑛の美しい景観を守りましょう』にも記載したとおり、哲学の木の地主の農家の方は、我慢の限界に達し、一時、哲学の木を切り倒すとまで言い出したのです。

  もう農家の方には「木を切り倒す」以外に畑を守る有効な対策がなかったので、抗議の意味を込めてこのような方法を取ったのはニュースを見ても明らかですよね。


 その間、行政や観光協会は、看板の作成や観光アドバイザーの導入など、とても十分とはいえないまでも様々な対策を行ってきましたが、今年は特に酷いようです。
 円安や昨年からの青い池人気、そしての嵐の木人気で、国内・海外問わず観光客が増えているせいでしょうか?

 美瑛に観光に来るのであれば、問題の詳細までは知らなくても、「郷に入っては郷に従え」という諺が示す通り、その地での観光客としての振舞い方くらいは学んで来るべきと思うのですが...。


 美瑛の丘の美しい景観は、農家の方々が農業を営むために厳しい自然と戦いながら長い年月をかけて作り上げてきた「農村景観」です。
 決して観光のために美しい景観を形成した訳ではありません。

 美瑛の丘は、作物の違いによって区画ごとの畑の色が異なり、加えて丘陵地帯独得の起伏がパッチワーク模様と呼ばれる景観を生み出すとして「パッチワークの丘」と呼ばれています。
 これも 観光客やカメラマンを喜ばせるために行っているのではありません。病原菌や有害線虫が多くなったり土壌の養分が不足したりして野菜の生育が悪くなってしまう連作障害を避けるため、輪作した結果が偶然パッチワーク模様となったのです。

 美瑛の丘では春から秋にかけて、ヒマワリやキカラシが畑一面に咲くことがあります。
 最近では町とJAが景観緑肥として推奨しているようですが、本来このヒマワリやキカラシは、土壌中の有機物を増やし、地力強化と有害線虫防除、透水・排水性改善のため緑肥です。そのため、花が咲いて間もなく、種が成熟する前に土の中にすき込みます。


 以上のように、美瑛の丘は観光地として整備・開発された場所ではなく、農作物の生産の場であり、農家の方々が生活を営む場です。

 よって美瑛の丘では、何をおいても農作業や農家の方々の日々の生活が最優先されるべきであり、観光客は農家の方々に迷惑をかけないよう、駐車場や道路脇のアスファルト部分から農家の方々が丘に描いた美しい景観をそっと拝見させて頂く、そのような謙虚な振る舞いをすべきです。

 それが美瑛の丘における『郷に入っては郷に従え』であり、美瑛に訪れる観光客が必ず理解し実践しなければなければならない心得である、私はそう思います。


注) ここで言う観光客とは、内地や海外といった観光客の出身は問わず、地元民も含めた観光客全体を指します。


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